ウイグル等の人権に関する衆院決議採択に際しての声明

 

 

令和4年2月1日

ウイグル等の人権に関する衆院決議採択に際しての声明

 

ウイグルを応援する全国地方議員の会
会長代行 小坪慎也

 

 

 

 令和4年2月1日、衆議院本会議において“新疆ウイグル等における深刻な人権状況に対する決議”(以降、本決議)が賛成多数で採択されたことについて、在日ウイグル人の陳情を一手に引き受けて参りました「ウイグルを応援する全国地方議員の会」(以降、当会)として声明を発表いたします。

 当会は、地方議会におけるウイグル人権問題に関する意見書採択を推進してきた地方議員組織であり、国政に対して“国家としての意思表示”を強く求めて参りました。この立場から、当会は本決議の採択について歓迎いたします。各党に異なる思想・政策がある中で、それらを乗り越えての決議であることの重みを噛み締めている次第です。
 また、地方議会においても多数の意見書が採択されており、幹事長(当時)として全地方議会に呼びかけた責任者として、ご尽力を賜った地方議員の皆様、そして賛同して動いていただいた多くの議会に対し改めて御礼を申し上げます。全国各地の思いを代表する地方議会からの国政に対する意思表示は極めて重要な意味を持つものでありました。
 一方で、地方議会が示した決意に比べ、国会決議に込められたものは十分ではないとの指摘があることも承知しております。奮闘された各議員、各地方議会が調整のために要した政治コストは尋常ではないレベルのものであり、地方議会が支払った政治コストに比して成果が少ないのではないかというご批判に関しては、十分な熱量をもって国政に伝播できなかった力不足を当会を代表してお詫びするものであります。

 

・本国会決議について
 さて、このたびの国会決議は、長尾敬衆議院議員(当時)がウイグル国会議員連盟の事務局長として牽引され、古屋圭司会長の決断があって実現されたことであり、決議文の内容に対する様々な意見があるとは言え、まずは当会として尽力いただいた両先生への感謝を表明いたします。
 二度にわたる不発があり、初期案の時点で様々な忖度にまみれていたものがさらに抑制的な内容となっていることについて、当会内部でも様々な意見がございます。地方自治法99条による地方議会での意見書採択においても調整という名において様々な文案修正が繰り返されており、国政における真摯な調整の結果としての決議文ということであるならば、当会としては文案の後退について一定の理解を示したいという立場です。
 具体的に申し上げますと、本決議が国を名指しておらず人権侵害の文言もないことについては、在日ウイグル人と日常的に接してきた当会としては受け入れがたいものではありますが、一方で我が国には調査機関がなく、そこに人権侵害があると独自に断定できる権能を有していないという指摘については、議会人としては理解できるところもございます。国権の最高機関である国会において、立法府としての判断を文字に残す以上は、我が国の国家としての能力の限界を超えた判断は困難と言えます。我が国にはスパイ防止法がないことはもとより、国際的な諜報組織も有りません。本決議の抑圧的すぎる文言を責めるよりむしろ我々は積み残してきた各種の国内法の未整備という問題を痛感しております。不完全な、または未整備の国内法が多数ある情勢下において、本決議がなんとか採択されたということだと理解しております。
 また、本決議に対中国の文言が記されなかったものの、これまでの過程において古屋圭司先生ほか4名で提出された決議案の中にある「人権問題は、人権が普遍的価値を有し、国際社会の正当な関心事項であることから、一国の内政問題にとどまるものではない。」という呼びかけに多くの議員が賛同し、距離感も思惑も異なる中で各党の歩み寄りが見られたことについては、本決議文のすべてを礼賛する立場ではないものの、議会人として一定の評価はなされるべきと考えております。

 

・地方議会の動きと議会調整
 地方議会における意見書採択の突出した事例として大阪府議会の全会一致があります。当会は大阪への調整に主力を割いてきました。日本ウイグル協会からも役員が来阪し各党所属議員に現状を訴えると同時に、意見書採択を要請。
 当会から公式に要望書を発出し、幹事長として私が自民と維新の大阪府議へ直接お渡ししました。大阪は、自民・維新・公明の三つ巴状態であり、あるいは国会以上に難しい調整作業だったかもしれません。各党の議員は“この大阪で調整してみせることは国政への後押しになり、全国の地方議会での採択にも影響を与える“との決意で、緊急対応を要する人権問題であることを念頭に、政党間の確執を乗り越えて事にあたられました。
 当会所属の西川良平堺市議は公明党衆議院議員に直接要請して公明党大阪府本部を公式訪問し、当会の要望を公明党所属の府議に伝え、約束を取り付けて山口代表のポスターの前で要望書と共に写真撮影まで行うなど、政党所属地方議員が通常では実施しないレベルの調整負荷を背負ってきました。
 また、維新所属の西田薫府議は維新側の調整にあたられました。大阪府議会で圧倒的議席数を誇る維新が意見書採択に賛同していく発端であり、当時は今ほどには注目されていなかったウイグル問題を府議員団に諮るという大役を果たされました。
 府議会に意見書を提出した自民党所属の西村ひかる府議は、両党および公明を含む各党において様々な思惑が錯綜し字句修正が難航し一部トーンダウンせざるを得なかったものの、タイトルに中国の文字を残した意見書を全会一致に導きました。
 大阪府内では政令市である堺市でも西川良平市議らの尽力で採択。大阪府には二つの政令市に続き、第三の人口を誇る中核市の東大阪がありますが、当会所属の野田しょうこ議員は、第一党が公明党である東大阪市議会で全会一致に導いております。
 令和3年3月以降、ウイグル人権問題に関する意見書を採択した地方議会は、当会および日本ウイグル協会が把握している数で30の都道府県にある84議会にのぼります。内訳は、47都道府県のうち9府県、政令市20市のうち6市、そして69の市町村議会での採択となっております。令和4年3月定例会に向けて調整を進めていた地方議会もございます。
 さらに自民党政令市議連も意見書採択を促す文書を発出しており、地方議会としては総力戦の様相でありました。議会ごとに筆舌に尽くしがたい調整があり、例えば役選(議長選や委員長選)を譲ったり、他の政策に関する協力を申し出たりと、本来であれば譲歩しがたい条件を提示して賛同を得てきており、簡単な調整コストではありませんでした。
 当会は、日本ウイグル協会と連名で、約1700ある国内の全地方議会に意見書採択の要請文を発送しております。これだけの採択議会数でありますから、この動きに協力された地方議員は膨大な数であり、全てを把握することはできておりません。ご賛同を賜りました全ての議員の皆様に深く感謝を申し上げます。
 尚、地方議会における採択状況については日本ウイグル協会と共同で記者会見を開催しました。主要キー局をはじめ自民・公明両党の全国会議員にプレスリリースを発し、実際に多数の国会議員が傍聴する中で発表を行っております。

 

・調整過程と要した時間について
 さて、国会決議がなされた事を受けて、これまでの当会の動きについて申し上げましたが、そもそも当会は国会決議推進のために結成された組織ではありません。国会議員連盟とは発祥も異なり、当然ながら傘下団体でもなく独立した組織であります。
 当会は、これまで5年にわたって世界ウイグル会議の公式窓口である日本ウイグル協会と連携してウイグル人権問題に取り組み、多くの被害実態を直接伺ってきました。各種の陳情が山積し、その一つ一つは切実なものでしたが、当会は国会決議の動きを知り、会の主体的な意思決定として、それら陳情の一部を止めてでも地方議会における意見書採択により国会決議の採択を支援する方向に舵を切りました。速やかに国会決議を得ることでウイグル問題が国民的に認知され、国政の実務的な行動に繋がり、今後の対応をスムーズに進めることになると期待しての決断でした。
 緊急性を有するこの深刻な問題には悠長に構えている時間がないというのが我々の切実な思いでした。東トルキスタンでは、多くのウイグル人が恐怖の中での生活を強いられており、我が国に住む在日ウイグル人・および日本に帰化された元ウイグル人の方々からは悲痛な訴えが今も続いています。中国から脅迫されているとの訴えもあり、早期のヒアリング・レポート化が必要で、時間がありません。
 国会決議は令和3年1月に計画されたと記憶しておりますが、その半年後の昨年6月の国会決議は不発に終わりました。それから本決議までさらに8ヶ月もの時間が経過しました。その間、衆議院議員選挙、自民党総裁選もあり、内閣人事を含む組織刷新がなされ、国会議員の皆様には特に慌ただしい時期であったことは理解しております。しかし、衆院選・総裁選の最前線には我々地方議員も投入されているのであり、その中で地方議会は着実な実績を積み上げてきたことは、地方議員組織を代表して言及せざるを得ません。また都道府県議会・政令市議会の多くは全会一致の原則が国会同様にございますから、同じ環境下において政党間の調整をし続けてきたのです。

 地方議会からの意見書を推進する動きには、地方議会を横断して活動できる実力者が多数参加しました。議長経験者も多く、国会議員にも強い影響力を有するベテラン議員も参加しています。当然、陳情等の処理能力も極めて高い人材であり、彼らがあるべき手続きを踏んでコミュニケーションをとり、進んで文案修正に応じて何とか全会一致に持ち込んだという議会もございます。これらの調整は国政における政党間の調整をスムーズにすることに繋がるのではとの期待も含んだものであり、国政における政党間調整に一片の盾として貢献したいという覚悟からの行動でした。
 これに比して、8ヶ月もの時間がありながらも本国会では衆議院のみでの決議採択となり、一部の政党が反対に回ったために起立採決からの賛成多数に留まっていることについて、やや落胆の声があることも事実であります。多忙であったことは理解しますが、それは地方議員に対する言い訳にはなりません。これが国政における決死の調整の結果であるなら受け入れるところですが、本当にそうなのかと疑ってしまうところがどうしてもあります。
 本決議に反対した政党は、「中身が骨抜きであること」を反対理由としてHPに公開しており、私たちはこれを責める立場にありません。しかし、理由がこの通りであるならば、私は「どうして調整しきれなかったのか」また「果たしてどれほどの調整コストが払われたのか」という点について、特定の政党や特定の議員に対してではなく、国会全体に対して疑問と悔しさを抱かざるを得ません。また、あくまで対外的に見る限りですが本決議はやや行き当たりバッタリな、もしくは唐突な出し方であったように感じられたことは残念でなりません。各党がどのように受け取られたかは存じませんが、地方議会においてはこのような処理はいたしておりませんし、全会一致に導くことができた議会において、地方議員が払った労力はまさにこの部分に集約されます。ネット上でも決議文の中身や文案修正の過程について問題視する声が一定数あることは把握しており、当会においても同様の声はありますが、前述したように我々も議会人として類似の調整作業を何度も行っておりますので、その結果がこの決議文であるというのであれば受け入れたいと考えております。
 その上で各地方議会が流してきた汗、もしくは流した血を思うならば、私は当会の会長代行として、上記の部分についての思いを述べるべき立場であり、一言述べさせていただいたことご容赦いただきたいと思います。そして、地方議会の意見書のほとんどは“中国と名指し”しており、強力な意志をもって採択されたものであり、これが仮に軽く認識されたのだとすれば、国会に我々の真剣な思いが伝わりきらなかったことについて、当会所属地方議員に対しお詫びせねばならないとも考えております。
 地方議会における意見書採択のために投じられた地方議会のエネルギーは近年まれに見る規模であったと思います。その労力がいかほどであったか、国政を担う皆様に正しく評価してもらえることを願うばかりです。今回の国会決議の採択を歓迎する立場ではありますが、当会の一部地方議員からは各地方議会の意見書を軽視されたのではないかという悲しみが示されていることは事実であり、もし杜撰な調整であったのならば当会の代表として私自身、物を申していく覚悟でございます。

 

・決議後が大切である
 国会決議は採択されました。しかし、決議自体にはそもそも法的拘束力はなく、あくまでも国家の意思を示す以上の効果はありません。当会は本決議を今後につなげていく活動に邁進して参ります。私たちに求められるのは決議を単に決議として放置するのではなく、国家としての意思が示されたことを論拠に、さらなる陳情対応を行っていくことだと考えております。
 在日ウイグル人の方からの陳情を受ける中でわかったことですが、ウイグル人が用いるチュルク語と日本語は文法が似ており、話せるようになるまでに要する時間は短いという特徴があります。そのため日本語を話すことが堪能な方であっても、漢字文化ではないため各種申請書や行政書類では誤字・誤読が多発しているということがありました。飲食店経営者としてのコロナ関連の助成金・補助金申請、不動産の賃貸トラブルなど、地方議員の一般的な知識で対処できる内容の陳情でした。いわゆる市民相談の範疇でありますが、もし誰の手助けも受けられず店が倒産してしまったり、もしくは借家を追われ住所がなくなってしまったならば、場合によってはビザを喪失し我が国に合法的に滞在する資格を失います。一度、オーバーステイ状態に陥ってしまえば、特定活動というセーフティーネットがあるにせよ、ここからの身分の復旧が容易ではないことは、国会議員の誰もがご存じのことかと思います。
 地方議員側が陳情対応において最も頭を悩ませていることは、『ウイグル・モンゴル・チベット人は、在留カードとしては全て中国籍』となっており、我が国は行政機構としてウイグル人を判別することができないことです。単に“オーバーステイの中国人”となってしまい、例えば地方都市で警察の職務質問などを受けた場合には適切な対応ができない可能性があります。国内法を順守するならば、究極的には中国に送還するよりありません。今の国際情勢において中国に強制送還してしまえば、命を落とされる危険があります。そうなれば我が国は国際社会からの批判を一身に浴びることとなるでしょう。
 当会が行ってきた複数の陳情処理のひとつひとつは極めて地味でありますけれども、そうなる一歩手前で踏みとどまるべく最前線を支えているのが当会であると誇りをもっています。ここで例示した陳情については、すでに処理が完了しておりますのでご安心ください。また、各陳情処理のノウハウ・手順を、標準化を進めており、地方行政において対処可能な案件については、全国各地で継続的に支援可能な体制を構築しております。

 当会は、人権侵害に遭った在日ウイグル人の声を伝える、広報・啓発の支援を行うとともに、在日ウイグル人の陳情を受け付ける地方議員組織として機能してきました。在日ウイグル人の陳情には生活相談に近いものが多く、7~8割は地方議員の職権の範囲内で対処できるものです。地方議員だからこそ対処しやすい案件もあると感じており、地方議員として国益に寄与できる現場であると認識しております。これが当会の果たすべき本来の機能です。
 陳情を受ける中で、在日ウイグル人を通じての東トルキスタン情勢の最新情報の収集を行ってきたのも結果的には当会であり、恐らく日本国内で最新かつ最も精密な情報を有しています。東トルキスタンの実態の告白・証言が東トルキスタンの家族のリスクになるため、メディア等を避けている方も多く、陳情処理等で信頼関係を構築ながら少しずつ得てきた情報は、現在ネット等に公開されているものとは質も規模もまったく異なります。
 我が国には法律が整備されていないがゆえに政府には何の権能もなく、何らの調査も実施できませんでした。そもそも行政上、ウイグル人を判別することすらできなかったため、情報収集についても当会にしかできなかったというのが現実だったと思います。

 本決議の末尾において「まず、この深刻な人権状況の全容を把握するため、事実関係に関する情報収集を行うべきである。それとともに、国際社会と連携して深刻な人権状況を監視し、救済するための包括的な施策を実施すべきである。」の一文が盛り込まれたことは、本決議を推進した国会議員の意地と良心であったと受け止めております。国政が本決議を強く認識し、省庁対応においても今まで以上に円滑な対応がなされることを強く期待しています。また、国会議員の皆様におかれましては、当会を経由した陳情処理に際し、国政の支援が必要な場合には何卒ご協力をお願いいたします。

 参院においても決議されるものと期待しているところでありますが、すでに衆院においては本件決議においては全会一致でなくとも構わないという前例ができたものと理解せざるを得ず、ならば本来この決議が何のために提出されるのかという原点に立ち返り、地方議会で示された覚悟を着実に受け止めて頂きたいと願うばかりです。地方議会は国会の下請け組織でないことと同様に、参議院は衆議院の付随組織ではないという矜持を、参院独自の決議文採択をもって示して頂けると確信しております。

 衆院において国会決議が採択されたことを受け、当会の運営を本来の職責である陳情処理に戻していきます。陳情処理のひとつひとつは極めて地道な職務でございます。我々は、誇りをもってこの地味な仕事を粛々と遂行して参ります。

  地方議員の同志へ。
  総員、持ち場に戻ろう。
  我々の現場に、最前線に。

 

( 発 行 履 歴 )
第一版 令和4年2月1日発行
    衆院国会決議を受け、地方議員向けにHPにて公開。
第二版 令和2年2月7日発行
    紙媒体での印刷使用を念頭に全体を加筆修正。

    発行:ウイグルを応援する全国地方議員の会
    ( https://for-uyghur.jp/ )

 

(pdf)
R040207(幹事長声明)ウイグル等の国会決議に関して(地方議員の会)

 

 

ウイグルを応援する全国地方議員の会

会としての公式見解になります。

2 thoughts on “ウイグル等の人権に関する衆院決議採択に際しての声明”
  1. 中身が骨抜きである事を理由に反対したのであれば、ウイグル人の命を守る矢面に立たねばなりません。

  2. 在日していて、仕事探しているウイグル人へ北海道のトマト農家の仕事紹介いたします、希望する方あれば連絡ください、詳しくは後程お知らせいたします、1人でも助けたいのです、もちろん夫婦、複数でも大丈夫です、連絡あり次第農家に掛け合ってみます、

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